江戸の小噺 六つ目
後家が一番
長屋の男どもが寄り集まって,女の品定め。
「うぶな振袖がいい」
「なんといっても年増にかぎる」
「比丘尼もいいな」
「いやいや,後家さ。後家がいちばん」
後家が一番と意見一致。
「アーア。俺の女房め,はやく後家にならんかなア」
とまぁ、長屋の男どもなんてぇのはこんな奴らばっかだったらしいです。
知りませんですけどね、昭和生まれだから。
今日もよろしくお付き合いください。
夕立屋という小噺でございます。
夕立屋
男 「暑いねぇ、こういう暑い日には、一雨ざーっと来てくれるとありがたいんだけど。」
夕立屋「えー夕立や夕立、えー夕立や夕立。」
男 「なんだい、あの夕立屋ってのは、雨を降らそうってのかな、面白い、呼んでみよう、 おおーい、夕立屋。」
夕立屋「へい、毎度ありがとうございます。」
男 「お前さん、夕立屋ってぇくらいだから、雨を降らせるのかい。」
夕立屋「へぇ、さようでございます。」
男 「へぇ、で、いくらなんだい。」
夕立屋「へぇ、これはもうほんのおこころざし程度で結構でございます。」
男 「そうかい、じゃさっそく、三百文ほど降らしてもらおうか。」
夕立屋「へ、かしこまりました。」
なんてんで、男はしばらく呪文を唱えておりましたが、やがて雨がざーっと降ってまい りまして。
男 「おや、おかげて涼しくなったよ、だけど、こうして雨を自由に降らせたり、止ませた りできるなんて、お前さん、ただの人間じゃないね。」
夕立屋「はい、実はわたくしは、空の上に住んでおります、龍(たつ)、でございます。」
男 「なるほど、道理で不思議な術を知ってなさる、だけどねお前さん、夏暑い時は、こう してお前さんが、雨を降らしていれば商売になるけど、冬、寒くなったら、商売はどう するんだい。」
夕立屋「へぇ、寒くなりましたら、倅の子龍(炬燵)をよこします。」
今日はこんなところで。
ではまた明日。