江戸の小噺 八つ目
【貧乏神】
貧乏神が来て,家にずうっといるのでくらしが楽にならない。
説教をきかせたら退屈して出ていくだろうと思って,説教語りを連れてきて
『安寿姫と厨子王』
をながながとやらせてみた。
そうしたら、貧乏神が家から涙を流して出ていく。
「貧乏神さん,お帰りか」
と聞いたら,
「いや,あまりいい説教なので,ひとりできくのはもったいないから仲間を連れてくる。」
さて、今日もよろしくお願いします。
扇子
男一「おまいさん、なんだね、せんす一本あったら、何年使う。」
男二「自慢じゃありませんが、あたしは、せんす一本あったら、十年は使いますよ。」
男一「自慢しちゃあいけない、一本のせんすを十年なんて、そりゃ使い方が荒い、乱暴だよ。」
男二「乱暴だって、一本のせんすを十年使えば、こりゃ十分だと思うけれども、じゃあ、おまいさんは何年使うね。」
男一「あたしゃ、自分の代では使いきれません、あたしと同じようにやらせれば、孫の代までもたせますよ。おまいさんは、sんすを十年って、どうやって使うのかい。」
男二「ま、いろいろ考えたんだけどもね、これ、いっぺんに広げれば、いっぺんに痛んじゃうから。まずこっちはんぶん広げて、これで五年もたせるんだね。
で、こっちが痛んできたら、もう半分の方を広げて、これで五年もたせる。
しめて十年もたせるつもりではいるんですけど、おまいさんは、孫の代まで使わせるって、どうしなさる。」
男一「あたしゃ、君みたいに、半分広げるなんて、しみったれた事はしませんよ。
あたしは、こうせんすをいっぱいに広げてね、顎の下へ持ってくる。
で、よく考えてみれば、これせんすを動かすから、痛む。だから、顔の方をこう動かす。」
これじゃ、風もなにもきやあしません。
今日もお付き合いいただき、ありがとうございます。
だんだんと寒くなってまいりますので、皆様方、お体には十分にお気をつけて。
ではまた明日おつきあいください。