みそまめ
旦那「おおい、定吉、あの台所へ行ってな、みそ豆が煮えてるかどうか見てきておくれ。」
定吉「へえい、台所のみそ豆、みそ豆と、あ、これかな、蓋を、わ、すごい湯気だな、あああ、
いい匂いだ、どれ、少し食べてみようかな、このお皿に、ふっ、うん、旨い、ふっ、旨い、旨い。」
旦那「おおい、定吉、みそ豆は煮えているのかい。」
定吉「へぇ、おいしく煮えてます。」
旦那「食べてやがる、ええ、誰が食べろと言った、意地の汚いやつだ、あのな、お向こうの佐藤さんの
うちへ行ってな、みそ豆が煮えておりますからと、遊びに来るように言ってきなさい、本当に
意地の汚いやつだ、とは言うものの、本当にうまく煮えてるかどうか見てみたいもんだな、どおれ、
ほほう、どれ、このお皿に、ふっ、うん、旨い、ふっ、旨い、旨い、もう少しお替わりっと、
まてよ、こんな事をしているところへなぁ、定吉が帰ってきて、なんだ、旦那だって食べてる
じゃありませんかぁ、なんてぇとなぁ、奉公人のしめしがつかないからなぁ、どこか一人で食べ
られる所っと、二階はなぁ、いつ定吉が上がってこないとも限らないし、どっか、ふふふ、
あったあった、お便所お便所、あすこなら一人で満員だからな、そうと決まったら、もう少し盛って、
ふふふ、ここなら大丈夫、旨い、旨いけど臭いな、旨臭いってぇやつだ、ふふふ。」
定吉「旦那、行ってきました、あのお向かいの佐藤さん、すぐ来るそうです、あれ、旦那、旦那、
もう人に用事を言いつけて、自分はいなくなっちゃうんだから、とは言うものの、さっきのみそ豆、
美味しかったな、鬼のいぬ間に、ふふふ、うん、旨い、旨い、待てよ、こんな事をしているところ
をなぁ、旦那にみつかったら、また、つまみ食いをしている、なんてんでなぁ、怒られちゃうから、
どっか一人で食べられる所っと、二階はなぁ、いつ旦那が上がってこないとも限らないし、
どっか、ふふふ、あった、あった、お便所お便所、あすこなら一人で満員だからな、
そうと決まったら、もう少し盛って、ふふふ、ああ、旦那。」
旦那「あ、定吉、何しに来た。」
定吉「あの、えっと、お替わりを持ってきました。」
ではまた明日。