高富屋のネタ帳

小噺ネタを上げます。落語が好き!!

小噺ネタ

カエルの吉原通い

 

昔は、今と違いまして、浅草から吉原へかけた、大きな田んぼがございまして、この田んぼを突っ切って冷やかしに行く。
「惚れて通えば千里も一里、長い田んぼも一またぎ」なんて、

学校じゃあんまり教えないけれど、
毎晩のように冷やかしがゾロゾロゾロゾロ方々を回って、
で、遅くなって田んぼ道を、いろんな女の噂なんぞして通るのが、何人も何人も毎晩でありますから、
田んぼの蛙がこれをすっかり覚えてしまいまして。

「おい、どうだいどうだい。ええ? 人間ばかり冷やかしに行くからな、蛙仲間も冷やかしに行こうじゃねぇか」
「出かけようじゃねぇか。うん」
「どうだ。そっちは行かねえか、おい。殿様。おい、おまえなんか背中に筋が入って様子がいいよ。え? 赤も行くかい。青も? みんな連れて行こうじゃねぇか。
エボ? 汚ねぇなあいつは。まァいいや。そいでも仲間だからナ。みんな、人間のとおりに立って行くんだよ。
え? 向こうではぐれると踏み潰されちゃうからな? ええ。こうやって、こう……人間はこういう格好して行くよ。
――ここが吉原だ。あー、綺麗だね」

「ここに並んでんのは、人間の花魁てぇのか」
「そうよ」
「ふーん。ここは何人いるんだ」
「ん? ここか? ここは七人いるんだ」
「おまえ、どれがいい」
「そうだな、俺はなんだなァ、七人いる、上から四枚目の女がいいな」
「うーん……俺は違う」
「おまえどれがいい」
「俺は下から四枚目がいい」
「あーなるほど……真ん中だからおんなしだよこん畜生」
「あァそうか」
「どうしてあれがいいんだ」
「ん? あれかい? あれはね、八橋の仕掛けを着てやがるからな。俺たちは、八橋は恋しいよ。なんて女だか聞いてみな」
「そうか。――若い衆さん」
「へえ」
「あの八橋の仕掛けを着てる女は、なんてェの」
「あたくしどもにはおりませんよ、八橋の仕掛けを着た女の子は」
「あすこにいるじゃねぇか」
「いいえ、八橋の仕掛けを着た女の子は、あれはお向こうにいるんですよ」

蛙だから立ってたンで眼が後ろのほうについてた。

 

蕎麦喰い

 

「つゆ、つけないんですか」
「ああ、つゆつけちゃ、蕎麦っ食いじゃねぇ」

本当に蕎麦の味を好きならつゆをつけねえで食うんだなんて、
この人長年の間つゆをつけないで食べてた。
この人、患いましてな、もういよいよ危ないとなったときに、
何か遺言はありませんかと言ったら、「死ぬまでに蕎麦につゆをつけて食いてえ」と言ったそうな。

今回のネタはこんなのを拾ってきました。

 

 

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