高富屋のネタ帳

小噺ネタを上げます。落語が好き!!

江戸の小噺 四つ目

今日も一つ、小噺ネタを、お楽しみください。

 


むかし、藪医者というのは、葛根湯医などと言われまして、なんでもかんでも葛根湯を処方する。

葛根湯というのは、良い薬なんですけれども、なんでもかんでも処方すればいいなんてものじゃない。

 

 


今日はそんな噺。

 

 

 

藪医者

 


よく下手な医者の事を「藪医者」と申します。

これは、昔カゼなどが流行りますと、 腕の良い医者は、お大名、侍、金持ちの商人などから引っ張りだこで、庶民のところへは なかなか来てくれません。

で、ああ、いいよ、たいした病気でもなし、カゼなんだから、 町内のへっぽこ医者にでも見てもらおう。

なんてんで、カゼが流行ると、声がかかって、 あっちへ行ったり、こっちへ行ったりで、カゼであっちへ行ったり、こっちへ行ったりす るんで、ヤブなんだそうでございましてす。

なかには、たけのこ医者なんてのもございます、。

どう言うのかってぇと、まだ、ヤブになる前。

ヤブの前だからたけのこなんてね。

こんな医者にかかったら、目 も当てられません。

あの方もなんだねぇ、医者にかからなければ、死なずにすんだのに、。

なんてんで、ひどい医者がありますもんで。

町人「すいません、先生、いますか、あの、すぐ診てもらいたいんですけど。」

医者「おお、患者か、どのようなあんばいだ。」

町人「ええ、うちの裏の竹に、花が咲いてしょうがないんですよ、竹は花が咲くと枯れる なんてぇことを言うんで、一度、専門家に診てもらおうと。」

医者「おいおい、何を血迷っているんだ、うちは医者だ、竹のことだったら、植木屋にで も診てもらうがいいだろう。」

町人「でも、こちらは藪医者、と伺いましたけど。」

なんてんで。

町人壱「おい、何を怒ってんだい。」

町人弐「なんおって、ここのへっぽこ医者の野郎だよ、ここんとこの流行病で、何を血迷 ったか先生診てもらいたい、なんてんで、呼びにきた野郎がいるんだよ。ってぇと、 あの野郎、めったに来ない患者だってんで、血相変えて飛び出しやがって。うちの 子供が遊んでいたんだが、子供がいたら、手でどけるがいいじゃあねぇか。

それを 野郎、足げにしていきやがった、ちくしょうめ、野郎、帰って来たら、顔がはれ上がるくらい、ぶん殴ってやろうと思って。」

町人壱「なに、あの医者に蹴飛ばされた、いやぁ、そりゃよかった。」

町人弐「何言ってやがる、蹴飛ばされて、いいわけねぇじゃあねぇか。」

町人壱「いいや、よかったよ、あの医者の手にかかってごらん、今ごろは、生きちゃぁい ないよ。」

 


なかには、手遅れ医者なんてのがございまして、患者を見る、途端に手遅れだ、と言っ てしまうんですな。

もう、手遅れと言ったんですから、患者が死んでもしかたありません し、たまさか、治ってしまえば、手遅れを治したってんで、名が上がる、とうまい事を考 えました。

そうそううまくいくとは限りませんで。

 


町人「先生、ちょっと、この怪我人、診てもらいてぇんですけど。」

医者「ううん、こりゃ手遅れだ、もう少し早いと助かったんだが。」

町人「手遅れですか、でも、今二階から落ちて、すぐ、連れて来たんですよ。」

医者「う、ううん、落ちる前ならよかった。」

 


落ちる前から医者には来ませんけれども、中には、葛根湯(かっこんとう)医者なんて んで、どんな患者にも、この葛根湯と言う漢方薬を飲ませてお終いにしてしまうと言う。

 


医者「ああ、次の方、どうしました。」

患者壱「ええ、どうも頭が痛いんですけれども。」

医者「頭が痛い、ふんふん、頭が痛いのは、頭痛と言ってな、葛根湯をお上がり、ああ、 次の方、どうしました。」

患者弐「ええ、あっしは、腹が痛いんですけど。」

医者「腹が痛い、ふんふん、腹が痛いのは、腹痛と言ってな、葛根湯をお上がり、ああ、 次の方、どうしました。」

患者参「ええ、あっしは、足が痛いんですけど。」

医者「足が痛い、ふんふん、腹が痛いのは、足痛と言ってな、葛根湯をお上がり、ああ、 次の方、どうしました。」

町人「いいえ、あっしは病人じゃねぇんで、こいつが足が痛くて、一人じゃ歩けねぇんで、いっしょに付いて来ただけなんで。」

医者「おお、そうか、付き添いか、ご苦労だな、葛根湯をお上がり。」

 


こんな医者にはかかりたくはないです。

 


今日はこんなところで。

 

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