高富屋のネタ帳

小噺ネタを上げます。落語が好き!!

江戸の小噺 五つ目

江戸の小噺というのは、本当に粋だったりとかします。

 


一番の粋が、

 

「よっ、粋だねぇ」

「いやぁ、かえりだ。」

 

さて、今日も小噺をお楽しみください。

 

料理屋の泥棒

 

ある料理屋に泥棒が入りまして、子分をずらっと表に待たせます。

親分が店の中へ乗り込みまして、お決まりでございます。

長いやつをギラリッと引っこ抜きますと、これを寝ている主のほっぺたにぴたりっと付けまして。

泥棒「おい、起きろ、金出せ。」

主 「いいえ、手前どもには、大金はございませんので。」

泥棒「嘘をつくな、昼間無尽で百両取ったろう、当たりはついてるんだ、出せ。」

主 「わかりました、命あっての物種でございます、最初から、無かったものとあきらめます。」

泥棒「分かりゃあいいんだ。」

 


なんてんで、奪った金を懐へ。

 


泥棒「それに、ここは料理屋だな、すこし腹が減った、何か食うものを出せ。」

主 「かしこまりました、しかし、あなた様は人からお金を奪うのが商売、手前どもは人に 料理を召し上がっていただくのが商売、料理のお代は頂戴いたしとうございます。」

泥棒「なるほど、その方、なかなか商売上手よのぅ、よし、約束だ、料理の代は払おう、何か持って来い。」

主 「しけでございまして、なにもございません、鯉の洗いに鯉濃でございます。」

泥棒「よし。」

 


なんてんで、泥棒先生、これをぺろりと平らげまして。

 


泥棒「うん、して、幾らだ。」

主 「ありがとうございます、しめて百両でございます。」

泥棒「ひゃ、百両だと、くそぉ、さっき取った百両取り換えされちまった、よーし、俺も男だ、百両払おう。」

主「ありがとうございます、これを御縁に、どうぞご贔屓に。」

泥棒「何言ってやんでぇ、人をばかにしやがって。」

 


なんてんで、表へ出ると、子分が。

 


子分「親分、中の首尾は。」

親分「しーっ、声(鯉)が高い。」

 

 

 

 

 

間抜けな押し入りもあったもので。

 
今日のところはこんなんで。

ではまた明日。

 

江戸の小噺 四つ目

今日も一つ、小噺ネタを、お楽しみください。

 


むかし、藪医者というのは、葛根湯医などと言われまして、なんでもかんでも葛根湯を処方する。

葛根湯というのは、良い薬なんですけれども、なんでもかんでも処方すればいいなんてものじゃない。

 

 


今日はそんな噺。

 

 

 

藪医者

 


よく下手な医者の事を「藪医者」と申します。

これは、昔カゼなどが流行りますと、 腕の良い医者は、お大名、侍、金持ちの商人などから引っ張りだこで、庶民のところへは なかなか来てくれません。

で、ああ、いいよ、たいした病気でもなし、カゼなんだから、 町内のへっぽこ医者にでも見てもらおう。

なんてんで、カゼが流行ると、声がかかって、 あっちへ行ったり、こっちへ行ったりで、カゼであっちへ行ったり、こっちへ行ったりす るんで、ヤブなんだそうでございましてす。

なかには、たけのこ医者なんてのもございます、。

どう言うのかってぇと、まだ、ヤブになる前。

ヤブの前だからたけのこなんてね。

こんな医者にかかったら、目 も当てられません。

あの方もなんだねぇ、医者にかからなければ、死なずにすんだのに、。

なんてんで、ひどい医者がありますもんで。

町人「すいません、先生、いますか、あの、すぐ診てもらいたいんですけど。」

医者「おお、患者か、どのようなあんばいだ。」

町人「ええ、うちの裏の竹に、花が咲いてしょうがないんですよ、竹は花が咲くと枯れる なんてぇことを言うんで、一度、専門家に診てもらおうと。」

医者「おいおい、何を血迷っているんだ、うちは医者だ、竹のことだったら、植木屋にで も診てもらうがいいだろう。」

町人「でも、こちらは藪医者、と伺いましたけど。」

なんてんで。

町人壱「おい、何を怒ってんだい。」

町人弐「なんおって、ここのへっぽこ医者の野郎だよ、ここんとこの流行病で、何を血迷 ったか先生診てもらいたい、なんてんで、呼びにきた野郎がいるんだよ。ってぇと、 あの野郎、めったに来ない患者だってんで、血相変えて飛び出しやがって。うちの 子供が遊んでいたんだが、子供がいたら、手でどけるがいいじゃあねぇか。

それを 野郎、足げにしていきやがった、ちくしょうめ、野郎、帰って来たら、顔がはれ上がるくらい、ぶん殴ってやろうと思って。」

町人壱「なに、あの医者に蹴飛ばされた、いやぁ、そりゃよかった。」

町人弐「何言ってやがる、蹴飛ばされて、いいわけねぇじゃあねぇか。」

町人壱「いいや、よかったよ、あの医者の手にかかってごらん、今ごろは、生きちゃぁい ないよ。」

 


なかには、手遅れ医者なんてのがございまして、患者を見る、途端に手遅れだ、と言っ てしまうんですな。

もう、手遅れと言ったんですから、患者が死んでもしかたありません し、たまさか、治ってしまえば、手遅れを治したってんで、名が上がる、とうまい事を考 えました。

そうそううまくいくとは限りませんで。

 


町人「先生、ちょっと、この怪我人、診てもらいてぇんですけど。」

医者「ううん、こりゃ手遅れだ、もう少し早いと助かったんだが。」

町人「手遅れですか、でも、今二階から落ちて、すぐ、連れて来たんですよ。」

医者「う、ううん、落ちる前ならよかった。」

 


落ちる前から医者には来ませんけれども、中には、葛根湯(かっこんとう)医者なんて んで、どんな患者にも、この葛根湯と言う漢方薬を飲ませてお終いにしてしまうと言う。

 


医者「ああ、次の方、どうしました。」

患者壱「ええ、どうも頭が痛いんですけれども。」

医者「頭が痛い、ふんふん、頭が痛いのは、頭痛と言ってな、葛根湯をお上がり、ああ、 次の方、どうしました。」

患者弐「ええ、あっしは、腹が痛いんですけど。」

医者「腹が痛い、ふんふん、腹が痛いのは、腹痛と言ってな、葛根湯をお上がり、ああ、 次の方、どうしました。」

患者参「ええ、あっしは、足が痛いんですけど。」

医者「足が痛い、ふんふん、腹が痛いのは、足痛と言ってな、葛根湯をお上がり、ああ、 次の方、どうしました。」

町人「いいえ、あっしは病人じゃねぇんで、こいつが足が痛くて、一人じゃ歩けねぇんで、いっしょに付いて来ただけなんで。」

医者「おお、そうか、付き添いか、ご苦労だな、葛根湯をお上がり。」

 


こんな医者にはかかりたくはないです。

 


今日はこんなところで。

 

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江戸の小噺 三つ目

今日も小噺ネタを一つ。

江戸の小噺にはよくケチなのが出て参ります。

そんな噺をひとつ。

 

鰻の匂い

 

 

 

 あるけちな男、鰻屋のそばへ引っ越してまいりますと、毎日毎日、鰻を焼く匂いを嗅ぎ

まして、

『クンクン、ああ、いい匂いだ。』

なんてんで、この匂いをおかずに、ごはん

を食べております。

月末になりまして、鰻屋から勘定を取りにきまして。

「ええ、勘定を取りにきたって、あたしは匂いを嗅いでいるだけだよ、なんだいこの勘定書は。」

なんてんで、勘定書を見てみますと、

『ひとつ、鰻の匂い嗅ぎ代、六百文』

とあります。

「ええ、鰻の匂い嗅ぐだけで、金取るのかい、わかったわかった。」

ってぇと、この男、財布から金を出します。

手の中で、ジャラジャラ音を立てまして。

「さあ、この音を受け取ってくだされ。」

 

粋な返です。

よろしいですなぁ。

 

 

ちょっとご利益ありそうな噺。

むかしの人は信心が深くって、護摩やら大麻やらをありがたがってたりします。

大麻と言っても、葉っぱじゃありませんよ。

お札とかお守りとか、持ってませんか?

 


そんな噺です。

 


御印文

 

  昔は、この御印文(ごいんもん)なんてのを、お寺でいただかせた事がありまして、これを額のところへ押してもらうと、七罪消滅をして、極楽往生ができると言う。

八五郎「吉っつぁーん、いるかい。」

吉平衛「なんでぇ、大勢そろって、どっかへ行くのか。」

八五郎「うん、これからね、みんなで御印文をいただきに行くんだ。」

吉平衛「御印文って、ああ、あの極楽往生ができるってぇ、ああ、いやだ、俺は極楽往生なんかしたくねぇと思っているんだ、いやだよ。」

八五郎「そんな意固地な事を言わないでさ、みんなこうして集まっているんだから、後でいっぱい飲むから、付き合いなよ。」

吉平衛「いっぱい飲むてぇのなら、付き合うけど、言っとくけど、俺は御印文なんてもらわないよ、ああ、ここだ、じゃ、早く行ってきねぇな、ああ、いいよいいよ、俺ぁここで待ってるから、みんなで早く行ってもらってきねぇ。

へへ、ああ、出てきやがった、どうしたい。」

八五郎「えへへ、今、いただいた。」

吉平衛「ぷっ、判子みたいなのもおでこにくっつけて、喜んでやがら、みっともないから、早くつばきを付けて、紙で取っちまいな、じゃ、いっぱい。」

八五郎「ま、いっぱいもいいけれども、ちょっとのどが乾いたぁね、ここの茶店で茶でも飲もう、ばあさん、ごめんよ。」

ばあさん「はーい、いらっしゃいまし。」

八五郎「休ませてもらうからな、それにしてもなんだね、大変な混雑だね、よっぽど御利益があるんだろうね。」

ばあさん「さようでございますなぁ。」

八五郎「ええ、なんだってね、ばあさん、この御印文をいただいたやつと、いただかないやつは、偉い坊さんが見ると分かるなんてぇ事を言うが、本当かね。」

ばあさん「さようでございます、なに、お坊さんでなくても、私でも、いただかない方は、ちゃんと分かります。」

八五郎「へぇ、おばあさんに、分かる、門前の小僧習わぬ経を読む、なんてぇ事を言うが、ばあさんに分かるかね、あ、そうだ、ばあさん、実はね、この中で一人だけ、いやだてんで、強情をはりやがって、御印文をいただかないやつがいるんだ、誰だか分かるかい。」

ばあさん「この中で、一人だけ……、あの、はじの方でしょ。」

八五郎「ああら、図星だ、だから言わないこっちゃないんだよ、神仏の事は悪く言えないんだから、お前も、これからすぐ行って、いくらか包んで、いただいた方がいいぜぇ、みねぇ、ばあさんにぴたりと当てられちまったじゃあないか、おい、ばあさん何か、こいつがいただかないってのが、分かるかね。」

ばあさん「分かります、その方が一番利口そうだから。」

 

あんまり、利口な方はもらわなかったようでございます。

 


今日はこんなところで。

 

 

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また明日、お待ちしてます。

 

<p

江戸の小噺 ふたつめ

今日も一つ、小噺ネタにお付き合いください。

 

海老床

 


 昔は、床屋さんの事を、髪結床、床、なんて言ったんです。

入り口の障子のところに、 達磨の絵が書いてあって、達磨床、海老の絵が書いてあって、

海老床なんてね。

また、 この海老の絵が上手く書いてあったんだそうですね、だから通りすがりのやつが。

 

町人1「おおい、源ちゃん源ちゃん、ええ

   この海老床の海老、上手く書いてあ

   るなぁ。」

町人2「本当だ、上手く書いてあるなぁ。」

町人1「まるで生きてる様だな。」

町人2「死んでるな。」

町人1「お、この野郎、まともに逆らうな

   よ、俺が生きてるって言ったら、

   おめぇも生きてるって言え。」

町人2「お前はねそれがいけない、これは

   絵なんだから、生きてる訳ない、

   死んでるよ。」

町人1「生きてる。」

町人2「死んでる。」

町人1「生きてる。」

町人2「死んでる。」

町人1「生きてる、しょうがねぇな。

   あ、隠居さんが来た、隠居さんに聞い

   てみよう。

   ねぇ隠居さん。」

隠居「なんだい。」

町人1「この海老床の海老、上手く書いて

   ありますねぇ。」

隠居「おお、本当だ、上手く書いてある

   なぁ。」

町人1「生きてる様ですよね。」

隠居「いや、生きちゃいないな。」

町人2「やっぱり死んでますよね。」

隠居「いや、死んでもいないな。」

町人1「じゃ、この海老、どうなってます。」

隠居「患ってるよ。」

町人1「患ってる。」

隠居「よーく見てご覧、ちゃんと、床に

   ついてる。」

 


きれいな下げでございます。

こういうきれいな下げがあると思えば、逆に少し下品な話もあります。

 

 煙草のヤニ

 

 昔、あるところに、吸った煙草の煙を、目からでも、耳の穴からでも出せる男がおりま

して、お城の殿様が、それは面白いってんで、その男を城に呼びまして。

 

殿様「これ、吸った煙草の煙を、目からで

   も、耳の穴からでも出せると言うの

   は、その方か。」

男 「御意にございます。」

殿様「ほほぅ、面白い、されば、吸った煙草

   の煙を、目から出してみせぃ。」

男 「かしこまりました。」

 

ってんで、男をキセルをぱくりっとくわえましてね。すると目から煙がもわーっ

と。

 

殿様「ほほぅ、面白いやつ。されば、吸っ

   た煙草の煙を、耳の穴から出してみ

   せぃ。」

男 「かしこまりました。」

 

ってんで、男をキセルをぱくりっとくわえまして、ん、と、すると耳の穴から煙がもわ

ーっと。

 

殿様「ほほぅ、面白いやつ、されば、吸っ

   た煙草の煙を、尻の穴から出してみ

   せぃ。」

男 「え、あ、は、ああ、かしこまりま

   した。」

 

ってんで、男をキセルをぱくりっとくわえまして、ん、ん、うーん、んーん、ブチュブ

チュブチュブチュ、ウニュ、ポッチョン。

 

殿様「これ、その方、なんであるか、

   それは。」

男 「へえ、煙草のヤニがつまっており

   ました。」

 


今日はこんな下品なままで明日に繋げます。

明日も良い日ですので、是非遊びに来てください。

 

 

 

江戸の小噺

今日も小噺ネタを一つ。

昔から、しわい屋なんて言いまして、ケチで、ケチで、自分のお金を出したがらないのがいます。

今日のネタは、その「しわい屋」。

 

 

 

しわい屋

 しわい屋は、七十五日、早く死ぬ、なんてぇ川柳がございます。

ある、大変にけちな方が、往来で薪を一本見つけました。

拾って帰れば、燃料の足しになるんですが、近所なので手を出して拾うのがみっともない、ってんで、この薪をけっとばしまして、

ポンスコ、ポンスコ、ポンスコポンスコ、自分のうちの前までまいりました。

あとひとけり、なんてんで、ポーンとけとばしましたが、

なにしろ、蹴る事ですから、見当が外れまして、自分のうちのガラス戸にぶつかります。

ガラスが二枚程、割れまして、これを見て驚いた。

しわい屋「あれ、あの薪一本のために、ガラスを二枚。」

ってぇと、あんまり刺激が強い。

そのまま、「うーん。」なんてんで目を回してしまいます。

近所の方が驚いて、水飲ませたり、薬を飲ませたりしますが、

これがなかなか息を吹き返しません。

するとそこへ、その方の倅さんが帰ってまいりまして。

近所の方「ああ、息子さん、いいところへ帰ってきました、あなたのおとっつぁんが

気絶をしましたよ、気絶を。水飲ませても、薬飲ませてもだめ、早く介抱して、介抱

して。」

するってぇと、息子さん。

「はは、父がまた気絶をしましたか、いや、ちょいちょいやるんですよ。どうも留守

の間に、御無理を願いました。」

てえと、息子さんの方は、わりかしと落ち着いているんですな。

どうするのかと思いますと、台所へまいります。柄杓に水を汲みまして、それを自分の口に含みますと、おとっつぁんの顔、めがけて、ぷっぷっーっと、水をかけまして。

息子「おとっつぁん、しっかりおし、今の薬は、ただだよ。」

ったら、「うーん。」と目をさました。

 しわい屋:ケチで吝嗇のこと。

 

また、昔から子供というのは生意気を言うもので、次はその生意気を言う子供の噺

 

じゃぶじゃぶ

 

 近ごろは生意気な子供が増えておりまして、うかうかしてると、大人でもやり込められ

てしまいまして。

 

子供 「おじさん、落語家やってるんだって。」

落語家「へぇ、さようでございますが。」

子供 「じゃ、小噺、知ってるかい。」

落語家「そりゃ、小噺のひとつやふたつ、知ってますけど。」

子供 「じゃ、こんなの知ってるかい。」

落語家「へぇ、どんなのですか。」

子供 「むかーしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがあったんだ。」

落語家「あのね、坊っちゃん、それは小噺じゃなくて、昔話、おとぎ話ってんじゃ

    ありませんか。」

子供 「いいからだまってお聴きなさいよ。それで、おじいさんは川へ洗濯に行っ

    たんだ。」

落語家「へえ、じゃ昔のおとぎ話と逆ですな、おじいさんは川へ洗濯なら、おばあ

    さんは山へ芝刈りですか。」

子供 「そうじゃねぇんだな。おばあさんも川へ洗濯に行って、二人でじゃぶじゃ

    ぶ、じゃぶじゃぶ洗ってたんだ。」

落語家「へえへえ、それから。」

子供 「これでお終い。」

落語家「お終いってね、坊っちゃん、小噺ってのは、落ちが肝心なんですよ、その

    噺じゃ、落ちが無いじゃあありませんか。」

子供 「落ちないから、洗ってたんだい。」

 


とまぁ、今日はこんなところで。

ではまた明日。

 

 

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小噺ネタ

カエルの吉原通い

 

昔は、今と違いまして、浅草から吉原へかけた、大きな田んぼがございまして、この田んぼを突っ切って冷やかしに行く。
「惚れて通えば千里も一里、長い田んぼも一またぎ」なんて、

学校じゃあんまり教えないけれど、
毎晩のように冷やかしがゾロゾロゾロゾロ方々を回って、
で、遅くなって田んぼ道を、いろんな女の噂なんぞして通るのが、何人も何人も毎晩でありますから、
田んぼの蛙がこれをすっかり覚えてしまいまして。

「おい、どうだいどうだい。ええ? 人間ばかり冷やかしに行くからな、蛙仲間も冷やかしに行こうじゃねぇか」
「出かけようじゃねぇか。うん」
「どうだ。そっちは行かねえか、おい。殿様。おい、おまえなんか背中に筋が入って様子がいいよ。え? 赤も行くかい。青も? みんな連れて行こうじゃねぇか。
エボ? 汚ねぇなあいつは。まァいいや。そいでも仲間だからナ。みんな、人間のとおりに立って行くんだよ。
え? 向こうではぐれると踏み潰されちゃうからな? ええ。こうやって、こう……人間はこういう格好して行くよ。
――ここが吉原だ。あー、綺麗だね」

「ここに並んでんのは、人間の花魁てぇのか」
「そうよ」
「ふーん。ここは何人いるんだ」
「ん? ここか? ここは七人いるんだ」
「おまえ、どれがいい」
「そうだな、俺はなんだなァ、七人いる、上から四枚目の女がいいな」
「うーん……俺は違う」
「おまえどれがいい」
「俺は下から四枚目がいい」
「あーなるほど……真ん中だからおんなしだよこん畜生」
「あァそうか」
「どうしてあれがいいんだ」
「ん? あれかい? あれはね、八橋の仕掛けを着てやがるからな。俺たちは、八橋は恋しいよ。なんて女だか聞いてみな」
「そうか。――若い衆さん」
「へえ」
「あの八橋の仕掛けを着てる女は、なんてェの」
「あたくしどもにはおりませんよ、八橋の仕掛けを着た女の子は」
「あすこにいるじゃねぇか」
「いいえ、八橋の仕掛けを着た女の子は、あれはお向こうにいるんですよ」

蛙だから立ってたンで眼が後ろのほうについてた。

 

蕎麦喰い

 

「つゆ、つけないんですか」
「ああ、つゆつけちゃ、蕎麦っ食いじゃねぇ」

本当に蕎麦の味を好きならつゆをつけねえで食うんだなんて、
この人長年の間つゆをつけないで食べてた。
この人、患いましてな、もういよいよ危ないとなったときに、
何か遺言はありませんかと言ったら、「死ぬまでに蕎麦につゆをつけて食いてえ」と言ったそうな。

今回のネタはこんなのを拾ってきました。

 

 

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今日のネタ 

今日のネタ

 

今日も一つ、ネタをご提供させていただきます。

 

  「ええ、あなたはたいへんにけちで、お金を残していると言う事を伺いました、

私も、お金を残したいと思いまして、ぜひ、けちの秘訣を教えていただきたいのでが。」

けち兵衛「けつの秘訣ですか、わかりました、では、庭へ出てください、庭にね、松の木がありますから、そこへはしごをかけて、登りなさい。」

   「松の木にですか、はしごをかて、登りました。」

けち兵衛「そうしたら、てきとうな枝に、ぶら下がってください。」

   「枝にですか、はい、ぶら下がりました。」

けち兵衛「では、はしごをかたします。」

   「ああ、あぶない。」

けち兵衛「だいじょうぶ、そうしたらね、ぶらさがったら、左手を離しなさい。」

   「左手をですか、はい、離しました。」

けち兵衛「そうしたら、右手の小指を離しない。」

   「小指ですか、はい、離しまた。」

けち兵衛「そうしたら、薬指も離しなさい。」

   「ええ、薬指もですか、はい、離ました。」

けち兵衞中指も離しなさい。」

   「ええ、中指も、はい、離しました。」

けち兵衛「そうしたら、人差し指も離しなさい。」

   「ええ、冗談じゃあありませんよ、おこっちゃいますよ、人差し指だけは、離せませんよ。」

けち兵衛「そうだろう、これだけは(人差し指と親指で輪を作って)、離すんじゃあないよ。」

 

こんなところで、今日はおしまい。

また明日。